自己破産のよくあるご質問
自己破産の申し立てを考えていますが、同時廃止事案と管財事案の違いについて教えてください。
自己破産の申し立てをすると、裁判所は破産手続開始決定の際、破産管財人を選任しても意味がない場合、破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止(終了)します。これを破産手続の同時廃止といいます。同時廃止の場合、破産管財人は選任されず、裁判所は、破産者本人の陳述をもとに速やかに免責許可の可否(債務をチャラにするかどうか)を決定します。
破産手続では、破産管財人が選任されるのが原則とされていますが、自然人については同時廃止事案が圧倒的に多数となっています。
それでは、同時廃止ではなく管財事件とされるのはどのような場合でしょうか。申立人が法人である場合は、全件管財事件となりますが、福岡地方裁判所管内では、自然人で概ね以下のような場合が管財事件とされています。
①債務者の下記の資産の項目ごとの合計額が20万円以上となる場合
記
ア 預貯金及び代理人弁護士への預け金
イ 保険契約解約返戻金
ウ 自動車
エ 敷金(但し、自宅として居住しているものを除く)
オ 仮に、現在退職したとすれば支給される退職金の8分の1相当額
カ 家財道具その他の動産
キ 債権、有価証券その他の財産権
但し、現金、預貯金及び代理人への預け金については、その合計額が一定額(標準的な世帯の1ヶ月の必要生活費である金33万円)を超える場合に管財事件となります。
② 法人の代表者をしていた債務者個人が、法人は法的整理がなされていないのに個人だけ破産手続の申し立てがあった場合
③ 債務者が現に個人事業を営んでいる場合や過去(原則として6カ月以内)に営んでいた場合
④ 破産申立前、債務者に債権者平等を害すべき支払、財産分与、贈与などが疑われ、管財人により調査する必要がある場合
⑤ 管財人による免責調査をする必要があると認められる場合
⑥ 債務者が不動産を所有している場合(売却が困難であることが明らかである場合や、担保余剰が全く見込めない場合を除く)
最後に、破産事件が同時廃止ではなく管財事件になった場合、どのような違いが生じるのでしょうか。大きな違いは、管財事件では、裁判所に予納金として金20万円以上を納めなければならないこと及び申立てから終了するまでの期間が、概ね、同時廃止であれば約3カ月で終了するのが、管財案件だと約1年を要することです。
以上からすれば、債務者にとっては同時廃止となることが望ましいことは言うまでもありません。