自己破産をすると引越しできなくなる??
自己破産手続き中に引っ越しをするには,裁判所の許可が必要
裁判所に対して、破産手続きを申し立て、破産手続き開始決定が出た場合は、裁判所の許可を得る必要があります。
(第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。)
破産手続きは、債務者の財産状況や債務状況を調査した上で、債務を返済していくことが難しいことを裁判所に対して報告する必要があります。債務者の財産状況などは、債務者の居住地近辺にその情報が存在することが多いため、破産手続きの申立ては、住民票が存在する市区町村を管轄する裁判所に対して申立てることになります。しかし、申立をした後に、勝手に遠方に引っ越しをしてしまうと、その後の破産管財人による調査などに支障をきたしてしまう可能性があります。そのような理由から、破産手続開始決定以降は、引っ越しをする場合は、裁判所の許可を得る必要があります。
裁判所の許可を得るためには、引っ越し先の住所、引っ越しをする理由を添えて、裁判所、管財人に上申、報告をすることになります。転勤など、合理的な理由がある場合は、ほとんど裁判所の許可を得られるのが運用です。
なお、同様の理由で、破産手続中の郵便物は、自宅ではなく破産管財人に対して送付される運用が一般的です(第八十一条 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条及び第百十八条第五項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。)
破産手続き前,破産手続き後は??
破産を裁判所に対して申立てる前(破産手続開始決定前)や、破産手続の終結後は、法律上、引越しに関する制限はありません。
破産手続を申し立てたとしても、自然人の破産で、個人事業主などではなく、配当すべき財産もなく、免責にも問題がないような場合は、破産手続開始とともに破産手続きが終結(同時廃止)することがあります。その場合は、引越し制限の期間はほとんどないといえます。
なお、破産手続開始決定前の引っ越しは、法律上禁止をする規定はありませんが、当然のことながら、過大に家賃が増える場所に引っ越すことや、初期費用が相当程度かかるような場合は、引っ越しをすることが相当かどうかか問題になることはあり得ます。不必要に財産が流出したとみなされた場合は、破産手続中に金銭を組み戻さなければならないこともあります。
弁護士に破産の申立てを依頼した後、破産手続開始決定がなされるまでに数ヶ月時間がかかる場合があります(弁護士費用を分割で積み立てている場合など)。その期間中の引っ越しについては、依頼をしている弁護士に相談をした上で、弁護士の指示に従う必要があります。
引っ越しは審査落ちする??ブラックリストとの関係
自己破産手続きをすると、信用情報機関に、事故情報として破産手続を取ったことが搭載されることになります。
入居をする際には、賃貸借契約を締結することになりますが、この貸主とのあいだの契約を締結する際に、信用情報を参照されることなく審査をされるのが一般的です。
ですので、自己破産をしたから引っ越しをできない、ということにはなりません。
ただし、ブラックリストに載っているか否かに関わらず、入居審査は行われるのが通常ですので、物件やオーナーによっては、収入、職業その他の理由で審査落ちすることはあり得ます。
また、賃貸借契約を締結するにあたって、賃料の支払方法がクレジットカード払いが指定されたり、また、機関保証人を付けなければならない場合は、それぞれ別の審査が必要になり、その際には事故情報を理由に契約が締結できない可能性が高くなります。