民事個人再生のメリット・デメリット

目次
「民事個人再生」とは、裁判所に借金返済ができないことを申し立てた上で、借金の総額に応じて法律で決められた金額に圧縮されたものを、原則として3年間で分割返済をする手続きをいいます。
今回は、民事個人再生のメリット・デメリット、どんな方に向いているのかなど、具体的に詳しくご説明します。
福岡で民事個人再生・債務整理でお悩みならまずは当事務所・福岡債務整理相談センターにご相談ください。
民事個人再生とは
まずはじめに「民事再生」とは、借金の返済ができなくなってしまった場合に、その旨を裁判所に認めてもらい、手続きを経て減額された借金を分割で支払う債務整理の方法です。
そして民事再生には借金の総額によって2つの種類があり、主に法人・個人で借金総額が5,000万円以上(住宅ローンを除く)の方が対象となる「民事再生」と、個人で借金総額が5,000万円以下(住宅ローンを除く)の方が対象となる「個人再生」があります。
民事個人再生とは?
上記のように、民事個人再生とは「個人で借金総額が5,000万円以下(住宅ローンを除く)」の方を対象にした債務整理の方法になります。
自己破産・任意整理との違い
債務整理として、任意整理の他に任意整理・自己破産という言葉を聞いたことがある方もいるかと思います。似ているようでそれぞれ違いがありますので、表をご覧ください。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
借金の減額度 | 低〜中 (原則利息のみ) |
中〜高 (20%程度まで減額) |
高 (全額免除) |
手続きにかかる期間 | 短 (約1~3ヶ月程度) |
中〜長 (6~12ヶ月) |
短〜中 (3~6ヶ月) |
手続きにかかる費用 | 低価格 | 中〜高価格 | 低〜中価格 |
手続き後のデメリット | ブラックリストに載る | ブラックリストに載る 住宅以外のローン返済中の財産を失う 官報に載る 債権者を選べない |
ブラックリストに載る 家や車等の財産を失う 官報に載る 債権者を選べない 資格や職に制限がかかる |
新規借り入れの制限 | 完済までできない | 約5~10年間できない | 約5~10年間できない |
周りにバレる可能性 | ほとんど無し | 基本的に無し | 基本的に無し |
保証人 | 任意整理の対象から外れている場合は影響なし | 返済義務が移る | 返済義務が移る |
個人再生の種類
個人再生には、「小規模事業者再生手続」と「給与所得者再生手続」2種類の方法があります。
こちらは弁護士や司法書士と確認しながら、どちらに当てはまるのかを明らかにします。
小規模事業者再生手続
利用対象者
① 将来における継続的な収入の見込みがある個人債務者
② 無担保再生債権の総額が5000万円を超えないもの(平成15年改正により拡大)
再生計画の実体要件
(1)原則として3年(「特別の事情」がある場合には5年を超えない期間)
3ヶ月に1回以上の割合による支払(229条2項)
(2) 最低弁済額の制限
① 清算価値を上回ること(174条2項4号)
→清算価値保証原則のことです。
→破算配当より多く支払うことから、「再生債権者の一般の利益」に反しないとされています。
② 無担保再生債権の額による制限(231条2項3号、4号)
3000万円を超え,5000万円以下の場合 10分の1以上の額
3000万円以下の場合
当該債務の5分の1以上の額
ただし、100万円を下回るときは最低100万円
当該債務の5分の1が300万円を超えるときは300万円以上の額であること
再生計画の手続要件
(1) 書面決議(230条3項)
(2) 反対の意思を表明した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、反対の意思を表示した者の議決権の額が議決権総額の2分の1を超えないときは、可決したものとみなされます(消極的同意要件-同条6項)
→もし、超えたときは職権で再生手続は廃止されます(237条1項)
給与所得者再生手続
利用対象者
(1) 小規模再生手続が申し立てできるもの
① 将来における継続的な収入の見込みがある個人債務者
② 無担保再生債権の総額が5000万円を超えないもの(平成15年改正により拡大)
(2) 給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者
(3) その額の変動の額が小さいと見込まれるもの
再生計画の実体要件
(1) 小規模再生手続と同様の弁済期間
原則として3年(「特別の事情」がある場合には5年を超えない期間)3ヶ月に1回以上の割合による支払
(2) 最低弁済額の制限
小規模再生手続と同様の要件
① 清算価値を上回ること
② 無担保再生債権の額による制限
3000万円を超え、5000万円以下の場合:10分の1以上の額
3000万円以下の場合:当該債務の5分の1以上の額
ただし、100万円を下回るときは最低100万円
当該債務の5分の1が300万円を超えるときは300万円以上の額であることに加えて、再生債務者の手取り収入から再生債務者及びその被扶養者の最低生活費のみを控除した額(可処分所得の額)の2年分を支払うこと(241条2項7号)
個人再生をするメリット5つ
個人再生をするメリットとして、以下の5つが挙げられます。
①借金を大幅に減額することができる
個人再生をするメリットとして、借金を大幅に減額できることが挙げられます。
個人再生では、借金の金額を減額してから3年〜5年で返済を行っていきます。その際の借金の減額について下表でまとめたので、参考にしてください。
基準債権額(借金の総額) | 最低弁済基準(最低限支払う必要のある金額) |
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円まで |
500万円以上1,500万円未満 | 5分の1 |
1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円まで |
3,000万円以上5,000万円未満 | 10分の1まで |
上記の通り、個人再生では借金の額に応じて最大10分の1まで減額されます。そのため、借金で悩んでいる方にとっては、返済がしやすくなると言えるでしょう。
②住宅や自家用車などの財産を処分せずに手続ができる
個人再生をするメリットとして、住宅や自家用車などの財産を処分せずに手続ができることが挙げられます。
自己破産の場合、自由財産以外の財産はすべて差し押さえられてしまいます。しかし、個人再生では特定の財産を残すことが可能です。
例えば、住宅ローンが残っていても住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンの支払いはそのままで、残りの借金を減額します。
また、自家用車に関しては、ローンの返済が終わったものであれば、守ることが可能です。このように、個人再生では住宅や自家用車などの財産は残せるため、個人再生後も比較的生活しやすいと言えるでしょう。
③借金の原因が問われない
個人再生をするメリットとして、借金の原因が問われないことが挙げられます。生活費での借金やギャンブルでの借金など、借金の原因は人によってさまざまです。
また、借金の内容によっては債務整理ができない場合があり、例えば自己破産はギャンブルなどの理由では適用できないケースが多いです。
しかし、個人再生は借金の理由を問われることはないため、ギャンブルなどの理由でも適用することが可能です。
④債権者からの直接の取り立てを停止できる
個人再生をするメリットとして、債権者からの直接の取り立てを停止できることが挙げられます。
弁護士に依頼して受任契約をすると、弁護士から債権者に受任通知を送付いたします。
受任通知を受け取った時点で債権者は、それ以降債務者に対しての直接の取り立てができません。そのため、取り立てで頭を悩ませている方は弁護士に相談してみると良いでしょう。
⑤裁判所手続きのため、強制力がある
個人再生をするメリットとして、裁判所手続きのため、強制力があることが挙げられます。
例えば、任意整理の場合であれば、債権者との交渉となるため、強制力が弱く債権者の合意がなければ成立しません。
一方で、個人再生は裁判所での判決が出るため、債権者への強制力が強いです。そのため、債権者は決定したことに対して、従う必要があります。
個人再生をするデメリット4つ
個人再生をするデメリットとして、以下の4つが挙げられます。
①他の債務整理と比較して手続きが複雑な傾向がある
個人再生をするデメリットとして、他の債務整理と比較して手続きが複雑な傾向があることが挙げられます。
個人再生は、債務整理の中でも手続きが比較的複雑です。そのため、個人で行うのは非常に手間がかかります。
また、個人再生は裁判所手続きであるため、用意する書類も多く非常に煩わしいケースが多いです。そのため、知識が乏しい個人が一人で手続きをするのはかなり難しいと言えるでしょう。
②ブラックリスト状態となる
個人再生をすると、その後5~10年間ブラックリスト状態となり、ローンやクレジットカードを利用できなくなることもデメリットと言えるでしょう。
住宅ローンを抱えた方にとって個人再生は特に有効な手段となりますが、それ以外の方のケースでも個人再生によって経済的に立ち直っていける方が多いです。借金でお悩みの場合、お早めに弁護士までご相談ください。
信用情報に傷がつくと、新規の借り入れやクレジットカードの発行・ローンを組むことが難しくなるため、今後の生活に支障が出てしまう場合があるでしょう。
③収入要件が厳しい
個人再生では手続き後に確実に債権者に対する支払いをできるよう、任意整理などと比べると高い返済能力を要求されます。無職無収入の人や収入が少額な人、自分の収入のない、主婦の方などは利用できない点もデメリットと言えます。
④支払いが残る
個人再生後は3年~5年の間、残った借金の支払いが残ります。支払いができなくなったら個人再生に失敗して、借金が元通りになってしまうおそれもあります。
向いている人・向いていない人
個人再生についてご説明しましたが、実際に向いている人・向いていない人がいます。
自己破産との違いを交えながら、ご説明します。
個人再生に向いている人
①住宅ローンが残っている人
自己破産をすると、持ち家をも手放さなくてはいけませんが、個人再生の場合は「住宅資金特別条項」という制度の元、住宅ローンは支払いつつ、他の債務のみ減額することができます。
②職業柄、自己破産ができない人
自己破産の手続きをしている間、職業や資格に制限がかかる場合があります。
下記のようなお仕事をされている方は、自己破産によって仕事を続けられなくなる可能性がありますので、個人再生をすることをおすすめします。
・会社の代表者や取締役
・団体企業の役員(金融取引業など)
・風俗業
・警備員
・質屋
③ギャンブルや浪費で借金をした人
自己破産の場合、ギャンブルや浪費で借金をした場合は、「免責不許可事由」とされ借金の減額が認められません。
しかし、個人再生には「免責不許可事由」がないため、借金の理由は問われずに債務整理を行うことができます。
個人再生に向いていない人
①保証人付きの借金を抱えている人
個人再生や自己破産は、申し立てると保証人に一括返済の請求がなされます。住宅ローンとは異なり、保証人付きの借金のみ対象外として個人再生の手続きができないため、保証人への影響を考慮する必要があります。
②家族に知られたくない人
個人再生や自己破産は、裁判所を介する手続きのため、裁判所から不意に自宅へ郵送物が届いてしまう場合があります。
家族に知られたくない場合は、弁護士や司法書士に協力を仰ぐことが良いでしょう。
一方で、任意整理の場合は裁判所を介さないため、その情報が周りの人に知られる可能性が低い手続きになります。
個人再生の手続きの注意点
個人再生は、しっかりとした準備と手続きをしないと免責許可が得られにくい手続きとなります。
注意しておきたいポイントをご説明します。
①特定の債権者を優先しない
債務整理には、債権者を平等に扱わなければならない原則があります。
個人再生だけでなく、債務整理を行う際、特定の債権者に対して優先順位を決めて支払いをするなどは「偏頗(へんぱ)弁済」といい、裁判所から「免責不許可事由」とされてしまいます。
②虚偽の申告をしない
手続き書類の一つに「財産目録」という書類があります。これは所有財産を自己申告ベースで記載するものになりますが、意図的にある項目を省略したりすることはかなりのリスクが生じます。
免責許可が得られないだけでなく、「詐欺破産罪」に問われる可能性もあるため、しっかりと記載するようにしましょう。
③提出期限は必ず守る
民事再生法163条1項により、債務者は裁判所が定める期間内に「再生計画案」を提出しなければならないと定められています。
理由もなく提出期限を守れないと、手続き廃止になる可能性がありますので、かなりの注意が必要です。
もし債権者との交渉に時間がかかり、どうしても間に合わせることができないなどの事情がある場合は、提出期限の延長を申し立てることができます。(この申し立てが受理されない場合もあります)
弁護士や司法書士に相談するメリット
個人再生は認められればご自身の財産を維持したまま借金の大幅な減額が見込める手続きになります。
しかし、今回ご説明した通り、様々なメリット・デメリットや、確実に免責許可を得るために必要な注意点なども存在し、スムーズに進めるには専門家のサポートが必要になります。
また、弁護士から債権者に送られる受任通知は、借金の返済および催促をストップすることができ、手続き中の精神的不安を軽減することも大いに期待できます。
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